2007年 03月 19日
ドイツの教育制度 ~10歳で人生を決定するシステム?!~ |
さっぶ~。
本日から冬が戻ってまいりました。先週まではあったかかったんですけどね。
今週は、日中でも最高3℃、夜間は-5℃近くなる日が続くそーです。
それでもドイツ人にしてみれば、「暖かい」んだそうですが。
さて、本日はドイツの義務教育制度について、授業中に興味深い話があったので早速報告です。
ドイツの教育制度は日本とは大きく異なり、受験システムがない代わりに、子供の能力に従った学校への振り分けが、信じられないくらい早くから行われる。日本やアメリカでは、なるべく多くの人々を大学へ進学させる風潮があるが、ドイツでは学業能力の高い者のみ大学へ進学し、そのほかは各自の能力に沿って職業訓練を中心とした教育を施している。
具体的に説明すると、6歳くらいで小学校に入学するまでは日本と変わらないものの、その小学校は9歳で終了し、その後、子供たちは10歳で、大きく分けて以下の3種類の学校へとそれぞれ進学していく。
①総合学校 Gymnasium (10~19歳)
②商業・工業学校 Realschuhle (10~16歳)
③職業訓練校 Hauptshuhle (10~15歳)
①総合学校はいわば日本の普通科で、大学進学用。②商業・工業学校は、日本の商業・工業高校に近い。③職業訓練校は、日本であれば高校卒業後から進学する「専門学校」に相当する。
1つ違うのは、その進学先を選ぶ年齢だ。
つまり子供たちは、10歳の時点で、
①大学へ行くか、②エンジニアなどの技術職になるか、③バス運転手やパン屋、床屋などの特定の職業に就くかの決定を迫られる。
ひょえ~。
いくらなんでも早すぎるんじゃないんすかね。ドイツ人である先生も「個人的意見としては、せめて12歳くらいまで押し上げるべきだと思う」と言っていた。しかし現実には、子供の成績によって、親や校長が進路決定をするらしい。日本人であるワタクシは「そんなに早く“見限る”なんてかなり残酷なんじゃ・・・」と思ってしまうが、ドイツ人の感覚からすると少々事情が異なるようだ。
ドイツ人は、偏差値偏重主義の日本人とは異なり、「個人が誇りを持てる職業に就く」ことに重きを置いている。つまり、皆が皆、学業に秀でる必要はないと考えるので、若年から「職業専門の学校」へ進学することに抵抗がないらしい。これが日本なら「うちの子はもっとがんばればいい学校に入れます!」などと大モメに揉めるだろうけど^^;
「がんばる人」にとっては、かなり厳しい面を持つ教育制度でもある。成績が悪いと容赦なく留年、2回連続すると「下」の学校へ落とされる。「上」の学校においては、かなり熾烈な競争があると言えるだろう。
反対に、成績が良い「下」の学校の生徒は、途中で「上」の学校へ転入することも可能だが、問題もあるという。
ドイツの政治家の間では、「10歳で学校が分岐するものの、途中でお互いの学校に編入できる制度を設けているから問題ない」と言われるが、学校の先生いわく、実際はそれほどうまく機能しないという。各学校の教育カリキュラムが異なるので(当然だが)、それがハンデとなる場合があるらしい。たとえば総合学校では外国語として10歳からフランス語とラテン語を学習し、13歳からはスペイン語と英語の授業がある。一方、商業・工業学校では10歳から16歳の終了時まで一貫して英語のみの学習にとどまる。結果、たとえ13歳で総合学校へ編入したとしても、彼らはフランス語やラテン語はまったく理解できない状況に陥るという。
※教育カリキュラムの詳細は州によって異なる
・・・つーか、ドイツ(我が州)では小学校からすでに外国語の授業が2つもあることに驚いた。どこかの国で英語の授業を小学校に導入するか否か大論争になっていたけれど、、、語学を「学科」ではなく、「コミュニケーションツール」として活用するなら、絶対的に早いほうがいいと思うんだけどね(ボソ)。
・・・話が逸れました。
また、ドイツではシュタイナー学校と呼ばれる、徹底的に点数教育を排除した(教科書やテストもない)特殊な学校もあり、他と一線を画している。この学校は日本でも数少ないが採用され、個人の能力を尊重する教育法として注目を集めている。
ちなみに、ドイツの総合大学は2年前まで全額無料だったが(ドイツでは基本的に小学校から大学までは無料)、最近制度が見直され、現在我が州ではセメスター(学期)につき500ユーロかかるという。それでも年間15万円程度ですかね。安いですね。貧富の差なく、優秀な人は高等教育を受けられるシステムなんでしょう。
それにしても、子供に早々から全人生にかかわる選択肢を与えるなんて、さすがヨーロッパとは思うけど、この教育システムが機能している背景には、やはりヨーロッパならではの「成熟した個人主義」があるんだろう。自分が集団の中でどこに位置するか非常に敏感な日本人には、アタマではすばらしいとわかったとしても、実際には浸透しづらいに違いない。
10歳の子供に向かって「アナタは成績が悪いから、職業訓練のほうがよい」と告げるのは、果たして厳しさなのか、愛情なのか。いずれにせよ、子供を1人の人間として扱い、その尊厳を認めていなければ言えない言葉だろう。
でも、かつての日本も、皆が皆学校へ進学ができなかった時代は、「一流の職業人(マイスター)」になることを良しとしていなかったか。自分の将来について真剣に考えるスキも与えず、エスカレーター式に進学させるニッポンの教育は、いつまでも子供でいることを容認する制度のような気もするんですがね。
本日から冬が戻ってまいりました。先週まではあったかかったんですけどね。
今週は、日中でも最高3℃、夜間は-5℃近くなる日が続くそーです。
それでもドイツ人にしてみれば、「暖かい」んだそうですが。
さて、本日はドイツの義務教育制度について、授業中に興味深い話があったので早速報告です。
ドイツの教育制度は日本とは大きく異なり、受験システムがない代わりに、子供の能力に従った学校への振り分けが、信じられないくらい早くから行われる。日本やアメリカでは、なるべく多くの人々を大学へ進学させる風潮があるが、ドイツでは学業能力の高い者のみ大学へ進学し、そのほかは各自の能力に沿って職業訓練を中心とした教育を施している。
具体的に説明すると、6歳くらいで小学校に入学するまでは日本と変わらないものの、その小学校は9歳で終了し、その後、子供たちは10歳で、大きく分けて以下の3種類の学校へとそれぞれ進学していく。
①総合学校 Gymnasium (10~19歳)
②商業・工業学校 Realschuhle (10~16歳)
③職業訓練校 Hauptshuhle (10~15歳)
①総合学校はいわば日本の普通科で、大学進学用。②商業・工業学校は、日本の商業・工業高校に近い。③職業訓練校は、日本であれば高校卒業後から進学する「専門学校」に相当する。
1つ違うのは、その進学先を選ぶ年齢だ。
つまり子供たちは、10歳の時点で、
①大学へ行くか、②エンジニアなどの技術職になるか、③バス運転手やパン屋、床屋などの特定の職業に就くかの決定を迫られる。
ひょえ~。
いくらなんでも早すぎるんじゃないんすかね。ドイツ人である先生も「個人的意見としては、せめて12歳くらいまで押し上げるべきだと思う」と言っていた。しかし現実には、子供の成績によって、親や校長が進路決定をするらしい。日本人であるワタクシは「そんなに早く“見限る”なんてかなり残酷なんじゃ・・・」と思ってしまうが、ドイツ人の感覚からすると少々事情が異なるようだ。
ドイツ人は、偏差値偏重主義の日本人とは異なり、「個人が誇りを持てる職業に就く」ことに重きを置いている。つまり、皆が皆、学業に秀でる必要はないと考えるので、若年から「職業専門の学校」へ進学することに抵抗がないらしい。これが日本なら「うちの子はもっとがんばればいい学校に入れます!」などと大モメに揉めるだろうけど^^;
「がんばる人」にとっては、かなり厳しい面を持つ教育制度でもある。成績が悪いと容赦なく留年、2回連続すると「下」の学校へ落とされる。「上」の学校においては、かなり熾烈な競争があると言えるだろう。
反対に、成績が良い「下」の学校の生徒は、途中で「上」の学校へ転入することも可能だが、問題もあるという。
ドイツの政治家の間では、「10歳で学校が分岐するものの、途中でお互いの学校に編入できる制度を設けているから問題ない」と言われるが、学校の先生いわく、実際はそれほどうまく機能しないという。各学校の教育カリキュラムが異なるので(当然だが)、それがハンデとなる場合があるらしい。たとえば総合学校では外国語として10歳からフランス語とラテン語を学習し、13歳からはスペイン語と英語の授業がある。一方、商業・工業学校では10歳から16歳の終了時まで一貫して英語のみの学習にとどまる。結果、たとえ13歳で総合学校へ編入したとしても、彼らはフランス語やラテン語はまったく理解できない状況に陥るという。
※教育カリキュラムの詳細は州によって異なる
・・・つーか、ドイツ(我が州)では小学校からすでに外国語の授業が2つもあることに驚いた。どこかの国で英語の授業を小学校に導入するか否か大論争になっていたけれど、、、語学を「学科」ではなく、「コミュニケーションツール」として活用するなら、絶対的に早いほうがいいと思うんだけどね(ボソ)。
・・・話が逸れました。
また、ドイツではシュタイナー学校と呼ばれる、徹底的に点数教育を排除した(教科書やテストもない)特殊な学校もあり、他と一線を画している。この学校は日本でも数少ないが採用され、個人の能力を尊重する教育法として注目を集めている。
ちなみに、ドイツの総合大学は2年前まで全額無料だったが(ドイツでは基本的に小学校から大学までは無料)、最近制度が見直され、現在我が州ではセメスター(学期)につき500ユーロかかるという。それでも年間15万円程度ですかね。安いですね。貧富の差なく、優秀な人は高等教育を受けられるシステムなんでしょう。
それにしても、子供に早々から全人生にかかわる選択肢を与えるなんて、さすがヨーロッパとは思うけど、この教育システムが機能している背景には、やはりヨーロッパならではの「成熟した個人主義」があるんだろう。自分が集団の中でどこに位置するか非常に敏感な日本人には、アタマではすばらしいとわかったとしても、実際には浸透しづらいに違いない。
10歳の子供に向かって「アナタは成績が悪いから、職業訓練のほうがよい」と告げるのは、果たして厳しさなのか、愛情なのか。いずれにせよ、子供を1人の人間として扱い、その尊厳を認めていなければ言えない言葉だろう。
でも、かつての日本も、皆が皆学校へ進学ができなかった時代は、「一流の職業人(マイスター)」になることを良しとしていなかったか。自分の将来について真剣に考えるスキも与えず、エスカレーター式に進学させるニッポンの教育は、いつまでも子供でいることを容認する制度のような気もするんですがね。
by nachapin110
| 2007-03-19 18:43
| ドイツの風景